一番理想的な山への登り方

昔の人の教えに 「道の上にある黒い石を踏むな」というものがある。遠くの目標は見なくても決まっている。

下を見て、地面の黒い石を踏まぬようにこまやかに観察し、一歩一歩堅実に歩め、という教えである。長い階段

を登る時も頂上を見ながら登ると、「まだか、まだか」と思い、それだけで疲れてしまう。一番理想的な登り方

は、目は一段上だけを見て、腰は低く 前に全体重をかけて登っていくと自然と頭は下がり 何十段の石段も自

然に登ることができる。逆に石段を下りるときは、体重を後ろにかけ、ふんぞりかえるようにすると楽に下りる

ことができる。

生き方も同じである。頂上ばかり見ている人は、頭だけ高く、ふんぞり返っている。足元だけを見ながら、一歩

一歩着実に進んでいく人は、頭が低く、自然と高い所へと登っている。威張ったように大きくふんぞり返り、人

をアゴで使うような人は、下り坂を歩む一方である。目的ばかりを追った 「一生懸命」 では、ふんぞり返るだ

けで足元がおぼつかなく、中々上へと進まない。一歩ずつ確実に進むには 「 一所懸命 」これが大切である。

                    木八郎



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