人は黙っていてもそしられるし、喋(しゃべ)りすぎてもそしられるものであり、過去・現在・未来にわたっ
て満場一致で褒められる人はいないし、またそしられる人もいない、世の中というのは不思議なもので、俺は
あいつがどうも好かん と思っていると、向うでもそう思っているものです。そのうちに、相手の一挙手一投
足が気になりだして、なにもかも嫌いになっていくわけです。
人間の争う原因は常に、『相手より自分のほうが正しい』『相手より自分のほうがすぐれている』という発想
なのである自分が相手の立場だったらどうするだろうかと考えた時、そこには争いも起こらずまた、怒りも起
こらない。そしてそのためには、『自分が必ずしも相手より優れているわけでもなければ、正しいわけでもな
い』という反省が必要なのである。自分は愚かである という自覚が前提としてなくてはならない。
木九朗
|