理事はもともと仏教用語


物事をみるには、変らないものと、変るものとの二つの視点が必要である。

「理事」とか「理事者」という言葉は、ごく身近によく使われる言葉だが、「理事」はもともと仏教用語で、

理とは根本の道理、事とは表にあらわれた現象のことである。したがって、会社の理事者とか協会の理事とい

うのは、会社なり協会なりの運営の大綱を把握するとともに、現実の具体的な問題の処理にあたる人のことで

ある。草木にたとえれば、理とは土に埋もれて見えない根であり、事とは地上にあらわれた幹であり、枝葉の

ことである。切花はどんなに美しくとも根がないのでその生命は短かく、あっとう間に枯れてしまう。同じよ

うに、いかに現実の具体的問題に通暁し、またこれが処理の術に長じていても、大局を把握していなかった

ら、やがては行き詰まってしまうであろうことは免れがたい運命である。にもかかわらず、事は理にくらべる

と、直接的で身近であり、それだけに取り組みやすく、かつまた現実の生活に結びついているので、人はとも

すると理を忘れて事をのみ走り、根無し草の一生を送りかねない。協会の運営も大局を見据えて目先の事にと

らわれずそうありたい。

                      木八郎

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