懐い（古い）思い出　…　若い日を思い出して
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過去の古い思い出は一片の焔と共に去って往く　誰でも経験する若い日の一端でもある


手紙やく焔折々風にゆれ
　　　　　　　わが悔恨はここにきわまる


秋ふけし興凱湖のさざなみに
　　　　　　　月は照れりき今宵の如く


まざまざと昨日の如くよみがえる　　　　　　
　　　　　　　はなやかなりし台湾のこと


たれ落つるはなと泪を手でぬぐい
　　　　　　　叱られし子は五円にぎりぬ。


友逝けりわが友ついに逝けにけり
　　　　　　　生きてかいなしわれを残して


外国の汽船の見える丘に立ち
　　　　　　　「異国の丘」を口すさむわ


ついおくのほのかなる思に彼の人の
　　　　　　　名前よびつつ夜のまちをゆく


苦節の中に生き抜き十年
　　　　　　　今実をむすび恩給下りぬ
荒海に砲とどろけば地ひびきの
　　　　　　　はるかににぶにぶ大三沢の岡


胴爺丸の遭難者あるといふ此の町内（マチ）に
　　　　　　　人繁く行き交ふたそがれの道を


越中のくすり売りきてくすり売る
　　　　　　　表道路の日ざし秋めく


散歩してかえる小径に夕ぐれし
　　　　　　　荷馬車の身体洗い居る人


朝早く魚の行商にゆく腰に
　　　　　　　はかり天びん長くさしたり


征服者は孤児をつくりて宗教の
　　　　　　　かげにかくれて愛の手さしのぶ


十年（トドセ）経てめぐり曖たる會いたる我が友に
　　　　　　　　話もできずし今は悲しく

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