裸足の僧侶の心深き読経

東日本大震災 裸足の僧侶の心深き読経
岩手県山田町の津波の洗われた被災現場を、一人の若い僧侶が素足に布製のわらじだけで被災地を回り読経をしながら死者を弔っているのだ。粉雪が舞い、おそらくは氷点下に近いこの地で、薄い僧装束と素足同然の姿で死者を弔うその姿には、仏教がもっていた本来の仏の教えと言うものの真実の姿を見た思いがした。紐が足に食い込み血が流れていたが「被災者のことを思えばこの程度のことは・・・」と小原氏(正確な名前は分からなかった)と称するその僧侶は述べていた。瓦礫に向かい、海に向かいただひたすら読経をし、自ら眠るところはテントに泊まっていたが、本人の寺も崩壊したか流されたかしていたらしい。しかし寺がなくても信仰はその人本人に宿ることをこの僧侶は教えてくれる。私のように普段は信仰心がまったくない人間でも、この僧侶が示している高い精神性は理解できる。思わず姿勢をただし、私はこの僧侶の映像に向かい手を合わせた。
                                       大幡次郎



この掲載物についてのお問合わせはこちらからご連絡ください。