短歌 蔦沼にあそぶ 

八甲田の山深き霧の中 蔦温泉にあそぶ



黒雲は 雨にかはりて 吹き乱れる
 甲田の尾根 越える時




きり深き 山のいただき 寒くして
 手足冷ゆるを いそぎ下山す




晴天に 甲田の山を 遠くみて
 さびしき心 はればれとす




深山の ほのかなる香が ただよいて
 蔦のいで湯は さ夜更けにかる




君として 歩む山径 しづかなる
 蔦の七沼 夕日にはえて
茜さす 甲田の峰は清くして
 蔦のいでゆは 今くれんとす


たのしかる 想い出ひとつ なきわれど
 湖畔歩むは わづかなる幸


山の香の こもらふ風を 頬にうけ
 たどたどとわが 乗れるバス行く


夜ふけし 蔦の温泉に 夜露落ち
 雨ふりし時の しづくににせて


偉大なる 甲田の峰の そのままに
 道求めるは おろかなることか


いつの日か 甲田の峰を 征せんと
 ちかいし友は 故人なりき


さながらに かわらのごとき 世に生きて
 なほゆかむとす 一つの道を


晩春に 遭難せし 高校生の
 墓標さみしく 甲田の峰にたつ


いかほどの 幸めぐり 求むひとすじに
 今日も けわしき 我が道をゆく

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