短歌・妻と二人でゆっくり旅行 老後一番の楽しみ

切々たる人生の真実が歌われた短歌



亡き君を 語り歩めば 海風の
  吹きあぐる 丘の墓地 見えて来ぬ


亡き君の  語りし言葉 今もなお
   心にしみて うずき現る


貧しかる 家内(ヤウチ)と知るか
  縁談を むかい目にして 客は帰りぬ

評  世間の噂さやらを聞き仲人
 がやつてきて見たもののその
 綺麗な嫁さんに比較して両親
 や家庭があまりにも貧しかった。
 明かるいべき縁談であるのに
 客は話をひかい目にして帰った
 その淋しさを詠んでみた。


色黒き 旅の研師が 手をとめて
  語る 訛りの ききとりがたき


不生女(ウマズメ)の 霊前は淋しかり
  花輪 供へし 子の一人無くし

評 子供のない人でも葬式に花輪
  盛籠等沢山の供物があがる人
  もあるが一般に肉親の無い弔いは
  淋しい感じがする。
  それも不生女(ウマズメ)という
  不貝?な女性の一生であってみれば
  よけいに憐憫なものが強く現れる。
晩年の 旅には静かな この宿と
  ひふそかに思いて 塩原を過く

評  子供達が一人前になったら
   妻と二人でゆっくり旅行を
   してみたいと思っているの
   が私の老後の第一番の望み
   である。最も此の望みが
   達せられるならば私の位
   幸福な者もなかろうが。



霞立つ 弥生の空に 風ありて
  バトミントンの 羽軽し舞う



星明るき 凍みつく夜半を いたずらに
道往く人の 下駄音寒し


入学に また就職に 親も子も
血眼にことなる 春はなやまし


喜びは 君につくべし 苦しみは 
吾れのみ耐えなむ 愛する妻ゆえに


夜行車の 窓より顔出す 初旅の
子供に 父は何か教へをり

評  切々たる人生の真実が歌われた

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