伝統的な短歌の正道より脱したプロレタリヤ短歌として

伝統的な短歌の正道より脱したプロレタリヤ短歌として命名するにふさわしい現代の世相生活様式を作品に盛ることに私は力を専念してきた。



協調と親睦のこと努むれど
  己れにむかぬ職場はうとし


夕映えの中に輝く屋根見えて
  鳩つぎ々に荒く飛び立つ


繕ひの傍へにあそびより帰り来し
  末子の食欲が妻の手をひきぬ


母の膝にかえれば忽ち泣きやみて
  乳房まさぐり子は高笑い


悪夢よ去れ酔ひて失敗せしことを
  身をもだえつつ反省する朝


陽炎へる浜道を行けば 
  怨みも悶えも溶けて白雲の浮く


たずね行けば無骨な友が草花を
  丹精してえる優雅さにあふ


吾が頬に小雪まじりの風いたく
  足をはやめて橋を渡れり

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