ある梅雨の一日、解語の花が私に語りかけてきて、木が話しかけているように聞こえた | |||
ある梅雨の一日、朝からじりじり雨が降り夕方まで続いていた。庭の座敷で酒呑みながらぼんやり猫間の障
子から庭を見つめていると、西の方向に宵の明星が昇り始め雲の間より太陽の明かりが、西側に植えてある木 の間から旭日の光ように燦然と輝き庭の木々を照らし始めていた。朝からじりじり雨に打たれ小さく凍えてい た木々が夕焼けの陽をいっぱいに受け緑の葉が「私は一番緑が美しいわ」「いやいや俺が一番強い緑だ」と幼 稚園の園児のようにガヤガヤ、ガサガサ騒々しく騒いでいる。私には木が話しかけているように聞こえた。一 瞬の陽の中のエネルギ−を競って得ようとする植物の力強く生きるたくましさ一枚一枚の小さな葉が赤子の物 をねだる、かのように上に両手を広げ天に近づこうと力一杯背伸びし力強く生きようと躍動しているように見 えた。緑の葉が陽を浴び輝いている光景に愛おしさと生命の生きる美しさを感じていた。 私の庭は松を始め落葉樹が全体を占めているが、その中で一輪の深紅の皐月の花が自分の存在感を示すように 私に語り掛けてくる。「この庭の中で目立つように一輪の花だけ咲いているのはなぜか、すべて普通に時を掛 け平々凡々と過ごし当たり前のように生きて行っている。こと、大事が起きたときはその当たり前の中から次 ぎの時代にあった遺伝子を持つ生命に生まれ変わる。普通に生きる事は立派に生命の種の保存になっている。 森羅万象すべての物に言えることで、これが生きると云うことだ」まるで不思議な世界の空間に入ったように 解語の花が私に語りかけてきたような気が、まるで夢でもみているのかのような不思議な感覚に陥ったひと間 の一夢であったような。いつのまに陽が落ち庭の木々の木影も消えて静かなもとの庭に戻っていた、酔いが華 胥の国の夢を見させたのか木の小枝が風に揺れ、落ちた木の葉が盃の中で舞っていた。 太郎 2011.07.06 | |||
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